「来月から新しい会社に行く」と決めたはいいものの、いざ退職の段取りを考えると頭がパンクしそうになる。退職届はいつ出す? 健康保険はどうなる? 有給は消化できる? 聞きたいことが山ほどあるのに、会社の人には気まずくて聞きづらい。
厚生労働省の調査によると、2025年の転職者数は約328万人。これだけの人が毎年「退職→転職」を経験しているのに、手続きの全体像をまとめた情報って意外と少ないんですよね。ネットで調べても断片的な情報ばかりで、結局なにから手をつければいいのか分からなくなりがちです。
そこで今回は、退職を決めてから新しい職場に入社するまでに必要な手続きを時系列順に整理しました。保険・年金・税金の切り替え、引き継ぎのコツ、意外と忘れやすい細かなポイントまで網羅しているので、ブックマークしてチェックリスト代わりに使ってみてください。
退職を決めたら最初にやること
退職の意思表示は「いつまでに」が勝負
法律上は退職日の14日前に意思表示すればOKとされています(民法第627条)。ただ、現実的にはそんなギリギリで言われたら職場も困りますよね。
一般的には1〜2ヶ月前に直属の上司へ口頭で伝えるのが円満退職のセオリー。就業規則に「退職の申し出は〇ヶ月前まで」と書かれている会社も多いので、まずは自社の規則を確認しましょう。正直なところ、就業規則を読んだことがない人がほとんどだと思いますが、退職前には目を通しておくべきです。
退職届と退職願の違い、知っていますか?
似ているようで法的な意味がまったく違います。
- 退職願:会社に退職をお願いする書類。会社が承諾するまで撤回できる
- 退職届:退職を通告する書類。提出した時点で撤回は原則不可
- 辞表:役員や公務員が使うもの。一般社員は使わない
円満退職を目指すなら、まず「退職願」を出して上司と話し合い、退職日が正式に決まったら「退職届」を出す、という流れがスムーズです。テンプレートはネット上にたくさんありますが、手書きの縦書きが一般的。パソコン作成でもNGではないものの、会社の慣例に合わせるのが無難です。
退職届の基本フォーマット
宛名は代表取締役社長、差出人は自分の所属部署と氏名、日付は提出日を記入します。退職理由は「一身上の都合」で問題ありません。具体的な転職先を書く必要はなく、聞かれても答える義務もないので安心してください。
有給休暇の残日数を正確に把握する
有給が何日残っているか、すぐに答えられますか? 勤怠システムで確認できる会社が多いですが、分からなければ人事に聞いておきましょう。
有給消化は労働者の権利なので、会社は原則として拒否できません。とはいえ、引き継ぎもせずに「明日から全部有給で」と言えば角が立ちます。引き継ぎ期間と有給消化期間を逆算して、退職日を設定するのがコツ。たとえば有給が20日残っているなら、最終出社日から約1ヶ月分を上乗せした日が退職日になります。
退職日までに職場でやるべき手続き
引き継ぎ資料は「知らない人が読んでも分かる」レベルで
引き継ぎは退職者の評判を決めると言っても過言ではない……いや、これは本当の話です。後任が決まっていなくても、引き継ぎ資料は必ず作りましょう。
ポイントは以下の3つ。
- 業務の全体像(何を、いつ、誰に、どうやって)
- 例外パターンやトラブル時の対応方法
- 関係者の連絡先と、その人に頼んでいいこと・ダメなこと
「口頭で十分でしょ」と思うかもしれませんが、人の記憶は驚くほどあてになりません。ドキュメントとして残すことで、あなたが去った後も職場が回ります。
会社から受け取るもの・返すもの
退職日前後でやり取りするものは意外と多いです。漏れると後から面倒なことになるので、リストで管理しておくのがおすすめ。
会社に返すもの:
- 健康保険証(扶養家族分も含む)
- 社員証・入館カード
- 名刺(自分の分も取引先からもらった分も)
- 通勤定期券(会社負担の場合)
- 制服・作業着
- 会社から貸与されたPC・スマホ
会社から受け取るもの:
- 離職票(退職後10日前後で届く。転職先が決まっている場合は不要なことも)
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 年金手帳(会社が保管している場合)
離職票は必ず届いたか確認を
退職後に転職先の入社まで間が空く場合、離職票がないと失業保険の手続きができません。退職後2週間たっても届かなければ、元の会社か管轄のハローワークに問い合わせましょう。「届いていない」トラブルはSNSでもよく見かけます。
健康保険・年金の切り替え手続き
健康保険は3つの選択肢がある
退職すると会社の健康保険から抜けるため、次の職場の保険に入るまでの間、なんらかの保険に加入しなければなりません。選択肢は3つです。
- 任意継続被保険者:退職前の保険をそのまま最大2年間継続。退職日の翌日から20日以内に手続きが必要。保険料は全額自己負担になるので、在職中の約2倍になる
- 国民健康保険:お住まいの市区町村で加入。退職日の翌日から14日以内が期限。前年の所得で保険料が決まる
- 家族の扶養に入る:配偶者や親が会社員なら、年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)で扶養に入れる可能性がある
どれが得かはケースバイケース。ざっくり言うと、前年の年収が高い人は任意継続のほうが安くなるケースが多いです。各自治体の窓口やホームページで国保の保険料を試算できるので、比較してから決めましょう。
年金は「厚生年金→国民年金」への切り替え
会社を辞めると厚生年金から外れるため、転職先に入社するまでの空白期間は国民年金(第1号被保険者)に切り替える必要があります。手続き先は市区町村の役所で、退職日の翌日から14日以内が期限。
持っていくものは年金手帳(または基礎年金番号通知書)と退職日が分かる書類(離職票や退職証明書)。2026年4月時点の国民年金保険料は月額約17,000円前後です。
ちなみに、転職先の入社日が退職日の翌日であれば、空白期間がないので国民年金への切り替えは不要。入社日と退職日の調整は、できるだけ空白が出ないようにするのが理想です。
税金まわりで見落としがちなポイント
住民税の支払い方法が変わる
会社員の住民税は毎月の給料から天引き(特別徴収)されていますが、退職するとこの仕組みが使えなくなります。退職時期によって対応が変わるのがややこしいところ。
- 1月〜5月に退職:残りの住民税を最後の給与から一括で天引きされるのが原則
- 6月〜12月に退職:残額を一括天引き or 自分で納付(普通徴収)を選べる
普通徴収に切り替わると、後日まとめて納付書が届きます。金額を見てびっくりする人が多いので、心の準備(と貯金)をしておきましょう。
確定申告が必要になるケース
年の途中で退職し、年内に転職しなかった場合は自分で確定申告をする必要があります。会社が年末調整をしてくれないためです。
逆に、年内に転職して新しい会社で年末調整を受けるなら、前職の源泉徴収票を提出するだけでOK。だからこそ源泉徴収票は大事に保管してください。なくすと再発行に時間がかかります。
転職先が決まっている場合の段取り
入社日から逆算してスケジュールを組む
転職先の入社日が決まっているなら、そこから逆算して退職日・最終出社日・引き継ぎ期間を設定します。
モデルスケジュールはこんな感じ。
- 入社2〜3ヶ月前:上司に退職の意思を伝える
- 入社1.5〜2ヶ月前:退職届を提出、引き継ぎ開始
- 入社1ヶ月前:引き継ぎ完了、有給消化開始
- 入社前日:退職日(空白期間ゼロがベスト)
もちろんこれは理想形で、実際には引き継ぎが長引いたり、後任が見つからなかったりします。大事なのは、転職先の入社日は原則ずらさないこと。内定先に「入社日を遅らせてほしい」と言うのは、相手の印象を悪くするリスクがあります。
転職先に提出する書類を早めに揃える
新しい会社から入社前に求められる書類は一般的に以下のとおりです。
- 年金手帳(基礎年金番号通知書)
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 扶養控除等申告書(入社時に記入)
- 給与振込口座の届出書
- マイナンバー関連書類
- 健康診断書(3ヶ月以内のもの)
健康診断書は意外と忘れがち。入社前健診を自費で受ける場合、費用は5,000〜10,000円程度が相場です。予約が取りにくい時期もあるので、早めに近くのクリニックを押さえておくといいですよ。
退職前に整えておきたい身の回りのこと
クレジットカード・ローンの審査は在職中に
これ、意外と盲点なんですが、クレジットカードやローンの審査は在職中のほうが圧倒的に通りやすいです。退職して無職の期間ができると、審査に不利になる場合があります。
とくに引っ越しを伴う転職の場合、賃貸の入居審査も勤務先情報が必要。転職先の内定通知書があれば問題ないケースがほとんどですが、念のため在職中に済ませておくと安心です。
転職活動中に使えるアイテム
退職前後はなにかと書類仕事が増えます。クリアファイルやバインダーで書類を整理しておくと、必要なときにすぐ取り出せて便利です。
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身だしなみを整える転職面接グッズ
面接用のスーツやバッグ、久しぶりに出してみたらシワだらけ……なんてことはありがちです。転職活動中はビジネスカジュアルOKの企業も増えていますが、最終面接はスーツが無難。クリーニングに出す時間がないなら、シワ取りスプレーがあると応急処置になります。
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バッグもA4書類が入るサイズで、床に置いたときに自立するタイプが面接向きです。普段使いもできるデザインなら一石二鳥。
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退職後のリフレッシュに
転職の合間に少し時間ができたら、リフレッシュも大事。次の職場で最高のスタートを切るために、心身のコンディションを整えておきたいところです。ストレッチや軽い運動を習慣にしておくと、入社後の生活リズムも作りやすくなります。
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やることリストで最終チェック
退職前チェックリスト
- 就業規則で退職申し出の期限を確認した
- 直属の上司に退職の意思を口頭で伝えた
- 退職届を提出した
- 有給休暇の残日数を確認し、消化スケジュールを決めた
- 引き継ぎ資料を作成し、後任(または上司)に共有した
- 社内のデータ整理・私物の持ち帰りを済ませた
- お世話になった人への挨拶を済ませた
退職日〜入社日のあいだにやること
- 健康保険の切り替え手続き(任意継続 or 国保 or 扶養)
- 国民年金への切り替え(空白期間がある場合)
- 住民税の納付方法を確認した
- 離職票・源泉徴収票・雇用保険被保険者証を受け取った
- 転職先に提出する書類を揃えた
- 必要に応じて健康診断を受けた
- 確定申告の要否を確認した
チェックリストの使い方
このリストをスマホのメモアプリにコピーして、完了したものから消していくと漏れを防げます。とくに保険・年金の手続きは期限が短い(14日〜20日以内)ので、退職日が決まったらすぐにカレンダーに入れておくのがおすすめです。
手続きの書類をまとめて管理するなら
退職・転職関連の書類は種類が多いうえに、提出先もバラバラ。ファイルボックスやドキュメントケースで「退職関連」「転職先提出用」「保険・年金」などに分けておくと、あとから探す手間が省けます。
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まとめ
- 退職の意思表示は1〜2ヶ月前に。就業規則の確認を忘れずに
- 引き継ぎ資料は「自分がいなくても回る」状態を目指して作る
- 健康保険は任意継続・国保・扶養の3択を比較検討する
- 年金・住民税の手続きには期限があるので、退職日が決まったら即スケジューリング
- 源泉徴収票と離職票は確実に受け取る。届かなければ早めに問い合わせ
- クレジットカードやローンの審査は在職中に済ませておくのが吉
- 転職先への提出書類(とくに健康診断書)は早めの準備が安心
転職は人生の大きな節目ですが、手続きさえきちんと押さえておけば、慌てることはありません。やるべきことの全体像が見えていれば、気持ちにも余裕が生まれます。新しいスタートを気持ちよく切るために、ひとつずつ確実に片付けていきましょう。
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